名古屋高等裁判所 昭和24年(控)859号 判決 1949年11月25日
被告人
瓜生明夫
外三名
主文
被告人瓜生明夫の本件控訴はこれを棄却する。
同被告人に対し本件控訴申立後の未決勾留日数中八拾日をその本件に算入する。
原判決中被告人前川敏夫、同西川幸、同小野寺幸之烝に関する部分はこれを破棄する。
被告人前川敏夫、同西川幸を各懲役四年に、同小野寺幸之烝を懲役参年に処する。
被告人小野幸之烝に対し本裁判確定の日より五年間右刑の執行を猶予する。
原審において生じた訴訟費用は被告人前川敏夫、同西川幸、同小野寺幸之烝及び同瓜生明夫並に原審相被告人田中善光、同小野寺政春同瓜生修の連帶負担とする。
理由
弁護人吉住慶之助控訴趣意第一、二点について。
被告人等に対する原判示の本件犯罪事実はその挙示する前記各証拠を綜合すればこれを肯認するに足り、記録を精査するもこれが誤認を疑うべき点は何等存しない。而して右認定の事実は要するに被告人瓜生明夫が原審相被告人田中善光より相談をかけられて同人同行の久保田克也が取引先より集金の十数万円をその帰途を擁して強奪せんことを右田中と協議の上相被告人前川敏夫、小野寺幸之烝、西川幸、並に原審相被告人小野寺政春、瓜生修の五名に右集金の事実及び犯行の計画を打明けてその加担を求め同被告人等の賛成を得て茲に右被告人等七名共謀して右犯行を決行することになり右前川等五名において同判示の日時場所で久保田の帰途を待伏せて同人に暴行脅迫を加えて同人から自轉車及び現金十五万九千五百円在中の赤皮製鞄一個を強奪しその際同人の頭部及び両脚太股部に全治約二週間を要する傷害を與えたというのである。從て被告人瓜生明夫は相被告人前川等と共同して右強盜を決行すべきことを謀議したことが明らかであるからその実行の分担に加わらなかつたとしてもこれを実行した他の共犯者たる右相被告人等によつてその犯意は遂行せられたものに外ならないので共同正犯として処断さるべきものであつて他人を敎唆して犯罪を実行させた場合と異なるものというべく、また右犯罪の実行にあたり傷人の行爲があつた以上右共犯者は齊しく強盜傷人の罪責を負うべきは当然であつて、被告人瓜生明夫が所論の如く右前川等に対し傷だけはつけないように言つたとしてもこの一事によつて右刑責を免かれ得ないものといわねばならぬ。故に原判決が被告人瓜生明夫の所爲につきこれを強盜傷人罪に問擬し刑法第二百四十條前段第六七條を適用して処断したのは正当であつて、右に関する所論も採用の限りではない。されば結局原判決には何等所論の如き不当、違法又は事実誤認等存することがなく、論旨はすべて理由がない。
(註、量刑不当により破棄自判)